「メアリと魔女の花」の米林宏昌が
監督したジブリ作品の思い出のマーニー。
心を閉ざした少女・杏奈と、海辺の村で
出会うマーニーの物語です。
ところで、なぜ杏奈はあれほど心を
閉ざしてしまっているのでしょうか。
※この記事はネタバレを含みます。
ご注意ください。
目次
心を閉ざした理由
本当の両親はすでに他界しており、
もらわれっ子として里親に育てられて
いる杏奈。
当初は活発でよく笑う子でした。
しかし、様々な要因が重なって人を
信じられなくなってしまいます。
養母への不信
もともとは養母からの愛情を受けて
仲良くしていたのですが、あるとき
佐々木家が杏奈を育てるための補助金を
自治体から貰っていることを知ってしま
います。
お金のために杏奈を育てているのだと
思った杏奈は、養母のことを信じられ
なくなってしまったのです。
養母がお金を受け取っていることを
杏奈に秘密にしていることも、信じて
いた養母に裏切られた気持ちになった
のでしょう。
難しい問題ですよね。
まだ幼い里子にうまく理解できるよう
説明するのは難しいですし、だからと
いって秘密にしておくのも後ろめたかっ
たことでしょう。
実際、養母の頼子さんはずっと悩んで
いたようで、劇中終盤に杏奈にお金の
ことを打ち明けています。
幼い頃はどうだったか描かれていませ
んが、劇中で杏奈は養母・頼子のことを
「おばさん」と呼んでいます。
実の親子でないご家庭でも同様の問題が
起きることが多いようですね。
本当の子としてかわいがっているのに
母として認めてもらえないのは悲しい
ことです。
血が繋がっているかどうかというのは
やはり当人にとっては重要なことなので
しょうね。
私は幸いにも血のつながった両親に
育てられてきたため、本当の意味で
里親と子の関係を理解することは
できません。
ですが、飼い猫とは血が繋がって
いませんが、この世の誰よりも
愛しています。
人と猫は違うと思うかもしれませんが、
病的な猫好きの私にとって、飼い猫は
ただのペットではなく、ホンモノの
家族です。
大きく話が逸れました。
すみません。
学校での孤立
実は杏奈はイギリス人とのハーフの
祖母を持つクォーター(のさらに1/2)
です。
(母がクォーターの場合、その子は
なんと言うのでしょうね)
髪の毛こそ金髪ではありませんが、
目が青く、そのことで学校では「人と
違う」ということを強く意識して
しまったようです。
そのため、自分も人と同じでありたい、
「普通」でありたいと強く強く願った
結果、感情を表に出さず、「普通」の
表情に固定するようになったのです。
そのことが異常であり、変わり者と
されてしまうことにも気付かずに。。。
杏奈は自閉症なのか?
ネットなどでこのようなコメントが
書かれていることがありますね。
違います。
杏奈は自閉症ではありません。
そもそも、自閉症というのは単に
周囲とのコミュニケーションが取れない
状態を言うわけではありません。
脳機能障害の一種で、トラウマなどで
自分の殻に閉じこもってしまった場合
には自閉症とは言われません。
劇中でも、最終的にはマーニーや彩香
との出会いで感情を表に出せるように
なってきています。
そもそも、「普通」になりたいあまり
意図的に無感情を演じていただけで、
実際にはきれいな風景に感動したり、
マイナスの感情を発露している描写も
ありますよね。
思春期における一過性のものという
括りに入れるには少し重い背景ですが
病気というほどの問題ではない、という
ところでしょう。
極度の人見知り
杏奈はコミュニケーション能力が低く
かなりの人見知りです。
喘息の療養のために滞在している村で
他人と関わらないために、同年代の子が
近づいてきたら反対方向に逃げ出すほど
です。
自分が人と違うことに苦しみ、普通で
あろうとするあまり却って人と違うこと
に気付いてしまうというスパイラルに
陥っており、どんどん内に篭ってしまう
杏奈。
思春期にありがちといえばありがちな
感覚ですよね。
人前に出るのを恥ずかしがる少年少女の
大半は同じような感覚を持っているの
ではないかと思います。
杏奈、心を開く
マーニーや彩香と出会い、自分の生い立
ちを理解していく中で、心を開いて
いきます。
マーニーとの出会いで明るくなった
マーニーと夜のピクニックへでかけ、
お互いの秘密を共有した杏奈は、その後
郵便局の前で倒れているのを地元の人に
発見されるのですが、翌日から驚くほど
明るくなっています。
自分の中で溜め込んでいた苦しみを外に
出したことで、気持ちがだいぶ軽くなっ
たようですね。
その後、療養先として泊めてもらって
いる大岩家の野菜収穫の手伝いをしたり
料理を手伝ったりと、かなり積極的に
コミュニケーションを取る様になります。
養母から「母」へ
育ての親である、養母・頼子が杏奈を
迎えに来たときには、すでに明るさを
取り戻していた杏奈。
頼子は杏奈に、長年黙っていた自治体
からの補助金について打ち明けます。
お金を貰っていても、貰っていなくても
杏奈への愛情は変わらない。
そのことが伝わり、杏奈の養母への
わだかまりは消えました。
さらに、その後札幌へ帰る途中、
絵描きの久子に会ったときには、
杏奈が頼子のことを「母です」と
紹介しました。
それまで「おばさん」と呼んでおり、
母親として認めてこなかった杏奈が、
初めて頼子を自分の母親だと認めた
のです。
見ているこちら側も胸を締め付けら
れるほど感動しました。
その後の杏奈のちょっぴり恥ずかしそ
うにソッポを向く姿がかわいいですね。
佐々木杏奈、やっと普通の女の子へ
こうして、明るさを取り戻し、自分が
他人と違うことを意識しなくなった
杏奈。
違うことを意識せず、そのままの自分で
いることを認めた結果、やっと「普通」の
生活ができるようになりました。
劇中ではその後の様子は描かれていませ
んが、札幌へ戻ってもきっとうまく
やっていけるでしょう!