前へ:杏奈はなぜ心を閉ざした?
ジブリアニメには珍しい、男の子との
関係がほとんどない思い出のマーニー。
心を閉ざした少女・佐々木杏奈と海辺の
屋敷に住む少女・マーニーの物語ですが、
二人の関係を見て百合ではないかと
勘ぐる人が続出しているようです。
実際はどうなのでしょうか。
目次
百合とは
百合の意味を知らない方に、簡単に解説
します。
女性同士が愛し合うこと。
ただし、女性の同性愛に近いのですが、
一般的にはそこまで深い関係ではなく
友達同士よりも距離感が近い親密な
関係であることを指すことが多いよう
です。
特にアニメファンの間では、劇中に
男の子の影がない作品では登場人物の
友達同士をそういった関係に見立てる
ことが多いようです。
マーニーと杏奈
さて、定義を理解したところで、実際に
思い出のマーニーが百合なのかどうかを
考えて見ましょう。
この映画のキャッチコピーは
あなたのことが大好き
あの入り江で、わたしはあなたを待って
いる。永久に―――
この2つです。
思い出のマーニーはWヒロインの映画です。
2人のヒロインが「大好き」と言い合っ
たり、「あなたを待っている」と言っ
ているわけですね。
これは同性の友情を越える関係、つまり
百合と見做すことができそうな気がします。
劇中のシーン
劇中では、心を閉ざしていた杏奈が
マーニーに強く惹かれており、
ボートを漕ぐシーンなどでは後ろから
抱きしめられて頬を染めています。
ほかにも、マーニーから抱きしめられ
て頬を染めながらも抱きしめ返せな
かったり等、若干いきすぎた好意を
持っているように見えます。
原作がイギリス文学のため、日本より
接触が多いのも百合に見える原因の
一つかもしれませんね。
思い出のマーニーが百合でない理由
上記のように、同性の友人としては
いささか距離感が近く見える杏奈と
マーニーですが、実は百合ではありま
せん。
というのも、杏奈とマーニーには友情
以上の特別な関係が結ばれているから
です。
杏奈とマーニーの関係とは
この先は作品の重要なネタバレを含み
ます。
思い出のマーニーを未見の方は「戻る」
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マーニーは、杏奈の祖母です。
劇中での杏奈とマーニーの話は基本的に
全て杏奈の想像です。
終盤で湿っ地屋敷に越してきた彩香に誘わ
れて屋敷内に入った際に、実際の建物
内部が空想のものと一致していたのは、
杏奈が幼い頃に祖母のマーニーから話を
聞かされていたから。
幼い頃に聞かされた話の記憶が脳裏に
残っていたために、その記憶を空想の
中で再現したわけです。
そして、彩香が見つけ出した日記は、
マーニー本人が書いたものだったため
空想の行動と同じあらすじになって
いたということですね。
つまり、空想上の女の子・マーニーは
杏奈の祖母です。
キャッチコピーの本当の意味
キャッチコピーの「あなたのことが
大好き」とは、祖母から孫への
愛の言葉であり、孫から祖母への
愛の言葉であるわけです。
杏奈は、幼い頃に事故で両親を亡くして
おり、さらには引き取った祖母もその
1年後に病気で亡くなっています。
天涯孤独となった杏奈は、養母に
引き取られることになりますが、
実の家族が自分を置いていなくなった
ことで人間不信に陥っています。
ですが、祖母であるマーニーはずっと
杏奈のことを愛しており、それが劇中で
空想と言う形で杏奈の前に現れていた
のです。
もう一つのキャッチコピー「あの入り江で、
わたしはあなたを待っている。永久に――。」
とは、マーニーが大好きだった入り江の
湿っ地屋敷で、いつまでも杏奈のことを
想っているという意味なのでしょう。
百合などと盛り上がっていた自分が少し
恥ずかしくなりますね。
やはりジブリ映画は心を綺麗にして見る
作品です。
杏奈の家族構成
最後に、杏奈の家族構成をおさらいして
おきましょう。
杏奈の祖母
まず、祖母のマーニー。
イギリス人の父と、日本人の母を持つ
ハーフです。
実はマーニーは両親にはあまり構って
もらえず、あの湿っ地屋敷で孤独に
過ごしていました。
杏奈の祖父
そして、マーニーの配偶者、和彦。
劇中では、杏奈がマーニーを連れて
サイロへ行った際、混乱したマーニーが
何度も呼びかけている名前ですね。
上記の通り孤独だったマーニーを支え、
後に結婚しています。
若くして病気でこの世を去っています。
杏奈の母
エミリー。
クォーターであり、漢字で絵美里と
書きます。
父である和彦が病気で無くなり、続いて
マーニーも身体を壊し満足に子育てが
できなくなったことから、全寮制の学校
に入れられることになります。
絵美里はこれを「捨てられた」と感じ、
実家へ戻ってきたときはマーニーを
恨み、親子としての絆がボロボロに
なってしまっていました。
家出同然で家を飛び出し、結婚。
後に杏奈を産みますが、交通事故で
夫と共にこの世を去ります。
杏奈の父
名前不詳。
詳細は語られておらず、絵美里が家出を
する際にバイクで連れ去ったことしか
描かれていません。
絵美里同様、交通事故で亡くなっています。
養母・頼子
佐々木頼子。
杏奈の育ての親です。
血は繋がっていませんが、杏奈への
愛情は強く、心配性な面があります。
杏奈は頼子のことを信頼しきれず、
ずっと「おばさん」と呼び続けていま
した。
しかし、マーニーとの出会いで、自分の
家族が自分を愛してくれていたことを
理解した結果、頼子に対する不信もなく
なります。
劇中終盤では、杏奈は頼子のことを
養母でもおばさんでもなく、「母です」
と紹介するシーンがあります。
あまり大きくふれられることはありま
せんが、個人的にはこのジブリ映画で
最も感動したシーンです。
百合議論結論
思い出のマーニーは百合映画では
ありません。
親子・そして祖母と娘の深い愛情の
物語です。
あまり大きく話題になりませんでしたが
近年のジブリ映画の中ではかなりの
傑作だと思います。