ある著名な新聞社がネットに「アメリカでアジア系住民への憎悪犯罪が頻発」という記事を掲載しています。
主要8都市で2021年は前年比4.4倍だったとのことです。
なるほど、たしかにこう聞くと急増していますし、頻発していそうな気がしますね。
今アメリカ合衆国へ行けば高確率で被害に遭いそうです。
・・・と、考えた人はマスコミの誘導にまんまと乗せられています。
頻発なのか
まずそもそも「頻発」という言葉があいまいな表現です。
「憎悪犯罪が頻発」と聞いて、多くの人は「今旅行に行けばほぼ確実に被害を受ける」と捉えるのではないでしょうか。
しかし、実際の数値で見て見ると2021年の主要8都市での発生件数は274件です。
新型コロナウイルスが収まっていないとはいえ、アメリカ合衆国の主要8都市にはたくさんのアジア人がいます。
ちなみに被害者は旅行者だけでなく現地に住んでいる人や仕事で赴いている人、そしてその家族も当然含まれています。
「新型コロナウイルスで母国に帰ってるんじゃないの?」と思う人もいるかもしれませんが、大幅に減ったのは旅行者であり居住者はそれほど減っていません。
たとえばニューヨーク州には100万人を超えるアジア人がいるとされています。
そして2021年のニューヨーク市でのアジア人への総御犯罪は133人です。
犯罪件数はニューヨーク市のものででアジア系人口は州全体のものなので純粋に比較はできませんが、100万人に対し133人ならレアケースと言えるのではないでしょうか。
最大22倍のカラクリ
主要8都市合計は4.4倍ですが、一都市に限れば「22倍に増えている」と危機を煽ることもできます。
カラクリは簡単です。
20年の発生件数が1件だからです。
前年が1件だったので22件になったら22倍です。
たしかに急増ですが、どう考えてもこの増え方が翌年も続くとは思えません。
ちなみにこの件数はワシントンD.C.のものです。
「だから安心だよ」ということでもない
私が当記事で主張したいのは、「小さな数値を倍率表示だけにして危機を煽るな」ということです。
「危険が何倍にも増えている!!」と言えば、犯罪だらけのカオスな国に見えてしまいます。
アメリカ合衆国で「アジア人に対して特に嫌悪していない人」の存在が語られることはほとんどありません。
私は別にアメリカ合衆国が親日・親アジアだと主張しているわけではありません。
嫌悪していないだけで特別好意を持っているわけでもないニュートラルな人が多いんです。
私は一方だけ(アジア人差別をしている人たちだけ)に偏って報道している姿に強烈な嫌悪感があります。
アメリカ合衆国は親日国だ、安全だなどと言うつもりはありません。
リスク管理は当然必要です。
アジア人差別云々以前に、日本と比べれば海外はどの国も危険です。
無警戒でスラム街を「観光」したり、酔っ払いや目つきがトんでいる人にカメラを向ければ被害を受けるのは当然です。
スラム街に行かなくとも、地元の人が利用している市場を練り歩きヘラヘラしながら買い物もせずに観光するのも不愉快に思われて当然です。
また、長財布をトートバックから突き出した状態で歩いたり、カフェで財布を使って場所取りをするなどのクレイジーな行動もやめるべきです。
人が少ないエリアに立ち入るべきではありませんし、安全とされるエリアであっても観光客はもてなして当然という態度をしてはいけません。
英語が満足に使えない状態でレストランの注文を間違えられても差別ではありませんし、自分から要求していないのにテラス席に案内されなかったからと不満をネットにまき散らすのも間違っています。
アメリカ合衆国の全土が極端に治安が悪いわけではなく、全ての現地人がアジア人に対して憎悪を持っているわけではありません。
一方で、日本と比べれば危険が多いというのもまた事実です。
必要な警戒は怠るべきではありません。
が、不必要なまでに警戒するのもまた違うと思います。
最後に
海外でのアジア人に対する憎悪犯罪(ヘイトクライム)が頻発していると必死で煽るマスコミと、それを信じて海外は怖いと盛り上がる人たちに違和感があるというお話でした。
アメリカ合衆国の主要8都市で年間たった274件しか発生していないというのは、十分少ないと言えるのではないでしょうか。
倍率だけで判断することの愚かさを理解してください。
そして「海外」を必要以上に怖がらず、正しく理解してください。
繰り返しますが、「正しく理解する」は「アメリカ合衆国は親日国だ」でもありません。
ゼロかイチか、極端な方向に決めつけずに相手を見ることが正しい理解だと私は思います。