コーカサス地方のジョージアはロシアとトルコに挟まれた小国です。
物価が安く、ビザなしで365日滞在できるため世界一周中の旅行者や外こもりに人気の国でした。
新型コロナウイルスに関しても、ヨーロッパやアラブなどの周辺国と比べて驚くほど感染発覚者・死亡者が少なく、そういった意味でも魅力が再認識されています。
※初期の頃はがんばってました
そんなジョージアでは超高金利の銀行の定期預金が話題になることがあります。
が、ネットの紹介記事をいくつか読みましたが彼ら彼女らは大事なことを隠して(またはサラっと流して)います。
ジョージアの銀行に大金を預けるのは絶対にやめるべきです。
その理由をお話します。
目次
2024年追記 もう外国人にメリットなし?
2024年時点でも外国人(日本からの短期旅行者)でも銀行口座自体は作ることができます。
ただし、どの銀行も「口座管理費」が必要となりました。
その額、なんと1か月あたり5GELから。
※銀行や付帯サービスによってはもっと高いものがあります
ざっくりと1GEL50円として計算しても月250円、年間で3000円もの手数料が引かれてしまいます。
10%運用として、3万円を定期預金として預けても差し引きゼロです。
たくさん預けないと恩恵が得られませんが、下記の理由によりたくさん預けることは大きなリスクがあります。
なぜダメなのか
いきなり結論から入ります。
・ペイオフ(預金保護制度)がわずか15,000GEL
・高金利は一生続くものではない
・為替リスクがある
です。
追記
・(一部の銀行で)ネットバンク・銀行アプリの利用時にSMSによる二段階認証が強制されるようになった
・英会話が苦手な場合は断られることがある
!追記!
上述の通り、2024年時点でメジャーな銀行の大半が口座運営費を徴収するようになっています
→TBCは月10GEL、ジョージアバンクは月5GEL~
わかる方はこれで十分かもしれません。
わからないという方のために、もう少し細かく解説していきましょう。
細かく解説「ペイオフが15,000GEL」
特に1つめのペイオフが15,000GELというのは致命的です。
日本円で50万円に満たないのです。
※レートが変わって2023年時点では15,000GELは75万円近くになっています
たとえ10%の金利だとしても、年間5万円しか増やせません。
※2023年時点では7.5万円
ネットでジョージアの銀行を紹介している記事では、100万円だとか1000万円といった金額を複利で10年20年と預けることを前提としています。
でももし1000万円預けていて、銀行が潰れたらどうしますか?
日本ほど経済が安定しているわけではないジョージアでは銀行が潰れない保証はありません。
また、ジョージアに住むのでなければ「潰れそう」かどうかの情報すら入ってこないでしょう。
さらに言えば、実際に潰れた場合は「ジョージア国内の指定の銀行に20営業日以内に支払われる」とされています。
つまり、ダイレクトに日本の銀行に海外送金はしてもらえません。
このペイオフの支払いは公的機関が行うため、「外国人のための特別な便宜」は期待できません。
もしも実際にジョージアに来て別の口座を作らなければならないとなった場合には、航空券が往復で10万円前後、移動時間は片道10時間以上かかります。
※もちろん事前に複数の銀行で口座を作っておくことは可能ですが、海外送金はネットでできないのでドミノ倒産のリスクがある状況ならば結局ジョージアに来てお金を引き出し日本円やユーロ・ドルなどに替えなくてはなりません
※ジョージアは仮想通貨大国になりつつあり、現地の銀行から安い手数料でビットコインやソラナなどに交換することができます。これを使えば、現地にいなくてもジョージアの銀行の預金を日本の銀行や取引所などに移すことはできそうです
そもそも、銀行が潰れるということはジョージアの経済が大混乱していることを意味します。
1つの銀行だけが潰れるケースは少ないでしょう。
当然ながら、下記の為替リスクも併せて考えると銀行が潰れた時点でペイオフ云々の状況ではなくなるでしょう。
補足
ペイオフについては見直しが検討されています。
2020年には300万円程度になるという噂がありました。(実際には50万円になりました)
さらに変更になる可能性は十分に考えられるため、ジョージアの「DEPOSIT INSURANCE AGENCY」での発表を確認してください。
DEPOSIT INSURANCE AGENCY(英語サイトに飛びます)
細かく解説「高金利は一生続くわけではない」
「高金利の定期預金に10年預けて複利で増やせば3倍以上」は計算上では事実です。
ですがかつての日本がそうであったように、そしてFXが人気だった頃のオーストラリアやトルコがそうだったように、高金利が10年20年先も安定して続くとは考えにくいです。
「金利が低くなったら別の投資先を考える」というのであればいいのですが、「ジョージアの銀行で不労所得を!」という論調には疑問を感じざるを得ません。
それでも「そんなのわからないじゃないか」と言う方は「捕らぬ狸の皮算用」という言葉を3回復唱してください。
細かく解説「為替リスク」
為替リスクについては改めて説明するまでもないかもしれません。
日本に住み続けることが前提で海外銀行にお金を預ける場合、お金をおろす際に現地通貨から日本円に両替が必要です。
2017年頃、1GELは40円でした。
そして2020年9月では1GELは33円です。
ちなみに2023年6月時点では54円前後です。
2017年にペイオフぎりぎりまで預け、2020年に回収することを想定してみましょう。
2017年に15,000GELを預けるには60万円が必要でした。
3年間10%複利で利息を得たとすると、15,000GELは19,965GELになります。
これを預けてから3年後の2020年時点のレートで日本円にすると658,845円です。
ということは、60万円は3年間で6万円ほど増えて返ってくるという計算になります。
年利10%のはずが、手元では3年間で10%しか増えていないわけです。
これは年利に計算しなおすと約3.2%ということになります。
もちろんそれでも日本の銀行よりは遥に高金利ではありますが、「10%の超高金利」ではありませんよね。
なお当然ながら、現在の33円が底値とは限りません。
今後逆にGEL高に反転する可能性もありますし、さらにGEL安が進む可能性もあります。
この為替リスクを完璧に読める人はこの世に存在しません。
※2023年には1GEL54円になっているため、2017年に預けて途中のGEL安に不安にならずに預け続けた場合は26,573GELで現在のレートで日本円にすると143万円近くになります
※ペイオフぎりぎりで預けた場合、増えた利子分が保証外になる点にも注意が必要です
最後に
私はジョージアに住んでおり、実際にジョージア国内の銀行口座を持っています。
ですが銀行の定期預金について、ネットで紹介されているほど魅力的な投資先とは思えません。
やはり何と言ってもペイオフが少ないのは問題です。
※2019年まではペイオフは3,000GELまでだったらしく、段階的に引き上げられてはいます(当然引き下げられるリスクも存在します)
ジョージアはロシアとの衝突という地政学的リスクもありますし、言葉の壁もあります。
「日本にいながら高金利の定期預金を!」という魅力的な話のリスクをきちんと理解しましょう。
なお、ツイッターなどで「ジョージアは月5万円で生活できる!」という情報が飛び交っています。
ドミトリーやシェアハウスなら可能です。
ただ、「ジョージアの銀行に600万円預ければ利息だけで生活できる!」というのは無謀です。
なぜ無謀かわからない方はこの記事を冒頭から読み直してください。
(ヒント:600万円はペイオフの補償外です)