「旧ソ連圏の〇〇」という言葉が使えなくなりそうです。
ニュースをご覧の方はご存知の事かと思いますが、バルト三国のエストニアの駐日大使館やコーカサス地方の駐日大使館が「旧ソ連のエストニア」「旧ソ連のジョージア」という枕詞をやめて欲しいと言っています。
ウクライナへのロシアの侵略行為が世界中で注目されているため、ロシアと同一視されるのは困るということだそうです。
私はジョージアに住んでおり、ウクライナにも何度も足を運んでいます。
そしてソビエト連邦の支配から逃れ独立を果たした国々で自由に活動するためにロシア語を学んでいます。
現地の魅力を伝えるために記事をたくさん書いており、そのほぼすべての記事に「旧ソ連圏の〇〇」という表現を使っていました。
当然ながらそこにネガティブな意図はありません。
今回の「旧ソ連という言葉でロシアと同一視されるおそれ」には驚きました。
旧ソ連と元ソ連、そして旧ソ連と旧ソ連圏
日本語はとても難しいですね。
私はロシアのことを旧ソ連と呼んだことがなく、またロシア以外のソ連の構成国だった国のことは旧ソ連圏の国と呼んできました。
また、私自身使った記憶はありませんが、もしロシアを「ソ連」に繋がる単語で呼ぶのなら旧ソ連ではなく「元ソ連」と呼ぶでしょう。
私は旧ソ連という表現はソ連と同一視したものではなく、「旧」という単語に「過去形」の表現が含まれていると思っています。
加えて言うならば、「ロシア語が通じやすい国」という意味で使っていました。
(2021年までの)ウクライナを含め、ロシアに嫌悪感情をもつ人々も普通にロシア語を使っていたので「それとこれは別」と考えているものかと思っていました。
バルト三国
今回最初に「旧ソ連」表現に不満を漏らしたエストニアはラトビア・リトアニアとともに「バルト三国」と呼ばれています。
これらの国も過去にソ連の構成国だった時代があります。
この三国は2004年にNATOの加盟国となっており、さらに同年にEUにも加盟しています。
これらの国で統計上はロシア語のほうが英語より通じるとされていますが、実際に訪れた際に出会った若者たちはほとんどが英語を(少なくとも英検3級の私よりは)使いこなしていました。
バルト三国に関しては「バルト三国」という表現がすでに日本でもある程度認知されている上、EU・NATOに加盟したことで民主主義や資本主義の色が強くなっていることで「旧ソ連圏の」という表現にはやや違和感があります。
「東ヨーロッパの」という枕詞がそれほど違和感のない表現だと感じます。
ジョージア
数年前にジョージア料理のシュクメルリがブームになったことで初めてジョージアの存在を知った人は多いです。
そういう人には、「コーカサス地方」と言っても通じません。
「黒海の東」もそもそも黒海の場所すら知らない人には通じないでしょう。
「トルコの東」が辛うじて理解してもらえる可能性がありそうです。
ただ、ジョージアでは通じる言語がジョージア語>ロシア語>英語という順になっています。
ジョージア語はご想像通りジョージアの母国語です。
ロシア語は「旧ソ連時代」の影響で高齢の方はほぼ全員が使えますし、その親に育てられた20代以上の若者も使えます。
英語よりもロシア語のほうが通じやすく、外見がどう見てもアジア人の私のような人間がカタコトでもロシア語で話しかけると喜んでくれます。
※もちろん「ジョージア語はどのくらい喋れるんだい?」とも聞かれます
旧ソ連時代の横暴やその後のロシアの一方的な態度によりロシアを嫌いな現地人はたくさんいますが、それはそれとしてロシア語を喋る人はとても多いです。
諸々併せると、「旧ソ連圏」という表現はわかりやすい気がします。
もちろんジョージア側が嫌だと言う意思表示をしたため今後は控えます。
ところで「シュクメルリの国」はOKなのでしょうか。
キラキラしたいんふるえんさぁがYouTUbeなどでよくこの表現を使っています。
私はむしろこちらのほうがバカにしている表現に感じます。
ジョージアの魅力はシュクメルリだけではないですし、日本でのシュクメルリブームは一過性のものです。
それを枕詞にしてしまうと「あー、あったねそんな料理www」という古い物扱いされやしないでしょうか。
ウクライナ
2021年まで、ウクライナという国名すら知らない日本人はとても多かったです。
実際に訪れたことがある人も少数でしょう。
知りもせずに「恐ろしい国」扱いしている人もいました。
実際のウクライナは確かに旧ソ連時代の社会主義の名残はあるものの、自国への愛が溢れるとても素敵な国でした。
確かに日本とは文化が違うため、常識も少し違う(どちらが正しいとかではなく)ことで面食らうことはあります。
ですが日本人への差別意識を持っている人は(少なくとも私の出会った人の中には)ほとんどいませんでした。
ちなみに、首都キエフや黒海に面した港町・オデッサなどではロシア語話者が50%以上とされており、ウクライナ語を喋れない若者もいます。
仲良くなった友人が「久しぶりに小学校の友達と会ったんだけど、俺はロシア語しか喋れず彼はウクライナ語しか喋れないから通訳として別の友人を呼んだんだ」という笑い話を披露してくれました。
※たぶん鉄板ネタなのでしょう。現地で知り合った日本人旅行者も別のウクライナ人から同じようなネタを聞かされたそうです
私は現地で「ソビエト」という単語と「ロシア」という単語を使わないようにしていました
※それはもちろん現地の人たちの嫌悪感情を慮ってのことです
私は今後、ウクライナがロシア軍を跳ね除け傀儡政権にならずに済んだ場合、自分の安全を確保でき次第現地で支援活動に参加します。
※自分が戦火に巻き込まれた場合、私が「自己責任だ。助けなくていい」と言ったとしても日本政府は自国民のために動いてくれるでしょう。その費用は日本国民の税金です。とてつもない迷惑をかけてしまいます。だから私は「外国人傭兵団」にも参加しませんし、安全が確保できるまで現地には行きません
おそらくその時にはロシア語を使う事すら厳しくなるでしょう。
ウクライナ人はバルト三国の人たちほどは英語が堪能ではないため、意思の疎通が難しくなりそうです。
最後に
私は「旧ソ連圏」という表現をロシアと同一視する目的では使っていませんでした。
というか、私はロシアすらソ連と同一視していません。
バルト三国は別として、英語が通じにくくロシア語話者が多いウクライナ・ジョージアに関しては悪気なく旧ソ連という表現をしていました。
ただ、悪気がないとはいえ、今回はエストニアだけでなくジョージアも「旧ソ連」という表現に不満を口にしました。
相手が嫌がっている以上、無理に使い続ける意味はありません。
今後改めていきます。