あなたは「勘」が働くタイプですか?
おそらく、ご自分の仕事など熟練したジャンルに関しては勘がよく当たり、初めて挑戦することについては勘が外れやすい傾向にあるのではないでしょうか。
「勘」は当てずっぽうで確率半々の博打のように見えますが、実際は自分の経験によって大きく確率が左右されます。
この事実を知っているだけで「勘に頼る局面かどうか」の判断の正解率がかなり上がります。
ちなみに正解率が上がるというのは「100%勘が当たる局面がわかる」「100%勘が外れる局面がわかる」という意味ではありません。
率の意味を勘違いしないようにご注意ください。
たとえ80%以上の合格率だろうと落ちるときは落ちます。
なぜ熟練者の勘は当たるのか
まず、初心者やバカの勘が外れる理由の前に、熟練者の勘が当たりやすい理由を説明します。
熟練者とは、同じ仕事を長年続けているサラリーマンや、趣味などで一つのジャンルを知り尽くしている人のことを指します。
※もちろんその方々がその精通しているジャンルで発揮する勘のことです。どんなことを極めた人でもそれとは異なるジャンルにおいては素人です
熟練者は、多くの経験から今直面している問題と同じような状況を思い浮かべることができます。
意識の上に思い浮かべられていれば、勘ではなくはっきりと「あのケースと同じ問題なのでこうすればいい」と解決策を導き出せます。
そうでない場合でも、無意識下で似たようなケースを複数思い浮かべられている場合に、「なんとなくこちらを選択したほうがよさそうだ」という言語化できない判断をすることがあります。
これが「熟練者の勘」です。
つまり、熟練者は過去の経験に(無意識化で)照らし合わせて、より成功率の高い選択ができているのです。
だから熟練者の勘は当たりやすいのです。
なぜ初心者の勘は外れるのか
一方、初心者は当然ながら経験が少ないです。
また、知識も少ないため「表面上だけ似ていて本質的な問題は大きく異なる」ケースであっても同じ状況だと勘違いしてしまうことがあります。
意識の上に「過去の似たケース」が思い浮かんでいれば、きちんと考えたり他人に相談することで勘違いに気付くこともできます。
ですが無意識化の場合、そもそもその「過去の似たケース」を言語化できないため詳しく調べることができません。
そのため何が同じで何が違うかもわからないまま、過去と同じ選択をしてしまうのです。
本質的問題が同じなら同じ選択で解決できますが、本質的問題が異なるのなら解決できるかどうかはわからなくなります。
そのため、初心者の勘は(熟練者の勘と比較して)外れる確率が極端に高くなります。
なぜバカの勘は外れるのか
当記事では「バカ」とは、初心者なのに上級者・中級者だと勘違いしていたり、目的を持たずに「ただラクなほうへラクなほうへ」と流される人を指します。
初心者なのに上級者・中級者と勘違いしている場合は、自分の少ない知識と経験がその世界の全てだと思い込み、ちょっとした類似を見ただけで全く同じ問題だと勘違いしてその他の可能性を考えられなくなります。
当然、無意識化でも通常の初心者と同じ勘違いをしやすく、さらにその結果思い浮かべた勘さえも「自分は上級者なので正しい」という思い違いで妄信してしまいがちです。
さらに、「ラクなほうへラクなほうへ」と流されるタイプの馬鹿はもっと質が悪いです。
「どちらの選択が正しい結果が出るか」よりも「どちらのほうが労力が少ないか」を重要な基準としてしまうため、冷静に考えれば明らかに間違っているとわかるような選択肢を選んでしまうことがあります。
しかもこの手の人は「自分がラクなほうに流されている」という認識を持っていないことが多く、「よく考えた」と言い出したりします。
もちろんこの「よく考えた」は「どちらが労力の少ない方法か」を考えただけです。
この手の人は「わからないならどちらを選んでも正解率は50%ずつ」という勘違いをしているケースがあります。
「ラクなほうが絶対に失敗する」というわけではありませんが、多くのケースでは「人がやりたがらない面倒な工程を省く」ことは失敗に繋がりやすいです。
この事実を無視して、「どちらがラクか」というバイアスのかかった二択問題に勘で答えれば失敗しやすいのは明白です。
サイコロで決定してもいい局面
人生には様々な選択肢が現れます。
その中には、どんなに調べても決めきれない選択肢というものも存在します。
熟練者であれ、初心者であれ、そしてバカであっても、自分の(そして周囲の上司・同僚・仲間の)持てる力を全て使い、期限いっぱいまで調べ尽くしてもなおどちらが正しいかわからないことは多いです。
その場合は、サイコロでもコイントスでも構いません。
なぜなら、そこまで調べきってなお選択できないのなら、その時点ではどちらを選択してもメリット・デメリットに大差がないからです。
もちろん、多くの場合は選択肢ごとにメリットもデメリットも違います。
その結果、「こっちの選択肢はここがいいけどあれがよくない」「でもあっちの選択肢はあれはいいけどここがよくない」という悩ましい状況で堂々巡りすることが多いです。
ですが決めきれないということは、そのメリット・デメリットを総合的に見た結果、甲乙つけがたいということです。
なお、選択をした後で環境や社会情勢・ライバル企業の行動などにより選ばなかった方の選択が正しいと判断できることはありますが、「選択した瞬間には感知することのできない未来の事象」で失敗した場合は後悔する必要はありません。
知りようのない情報は選択肢を選ぶ材料にはできないという当たり前のことを忘れないようにしましょう。
また、「わからないから行動しない」というのも今の時代ではデメリットのほうが大きいです。
行動しないのは現状維持ではなく、周囲に追い抜かれるわ自分は知識も経験も得られず成長しないわでいい事がなにもありません。
「選べる選択肢がすべてメリットよりデメリットが大きい」という状況なら行動しないという選択肢もアリですが、「どちらもメリットが同じくらいだけど選べないから行動しない」というのは「行動しない=やらないというラクな選択肢を選んだだけ」ということを理解しましょう。
最後に
ということで、勘が単純な当てずっぽうでないというお話でした。
熟練者の勘と初心者の勘は確率が全く違うので、経験のないジャンルでは可能な限り下調べをしてから動きましょう。
※熟練者は言われなくても可能な限り下調べをするので、結局「自分が初心者だろうと上級者だろうと下調べをする」という結論になります
自分がラクなほうへ進みたがる傾向があるタイプなのかどうかも知っておくと「外れる勘」を検知しやすくなります。
初心者の中には「下手な考え休むに似たり」ということわざを言い訳にして考えるのを放棄する人がいます。
たしかにその一回の選択だけで見れば、初心者の少ない知識・経験では正解は導き出せないかもしれません。
ですがそこで調べた情報や「なぜそちらを選んだか」という選択の根拠、そしてその結果という経験は将来の糧になっています。
この経験こそが初心者を初級者・中級者へとステップアップさせていきます。
特に一人で取り組む趣味の世界のような指導者のいない場では、初心者は「間違ってもいいから考え抜いて選択する」という経験は必須です。