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同人作家の海外移住は可能?初心者レベルでもできるけど生活費以外のリスクを知って欲しい!

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同人作家というのは、商業誌への掲載で原稿料を貰うのではなく、コミケなどで自作の漫画やCG集などを販売(頒布)する人たちを指します。

 

最近ではネットが整備されたことでDL販売も一般的になりました。

 

またパソコンやデジタルイラストツールの高性能化・低価格化により、同人作家の多くがデジタルへと移行しています。

 

となると考えるのが「物価の安い国に住みながらDL同人を販売したらいいのでは?」ということですよね。

 

結論だけ言えば、可能です。

 

それも初心者レベルから可能です。

 

ただ、私は「可能」とは言いましたが、「簡単に」「片手間で」とは言っていませんし、「海外移住こそ同人作家の最高の選択である」とも「海外移住しない同人作家はバカ」とも言っていません。

 

当然ながら「昨日板タブを買いました!絵を描くのは今日が初めてです」というような方は生活費を賄えるほど稼げるのは少し先になるため、貯金を切り崩したり、海外移住をするためにアルバイトや派遣などで一時的にお金を貯める必要はあります。

 

 

そして、海外での同人活動は一人で部屋に籠っていてもできるためその部屋が日本ではなくても可能というだけで、当然ながらデメリットはあります。

 

どうか、いんふるえんさぁたちの耳障りのいい言葉だけを妄信して後悔しないようにしてください。

 

彼ら彼女らの中には「pvや視聴回数さえ稼げればいい」と考えている人がいます。

 

そういう人たちは不都合な事実を隠しています。

 

 

 

大前提

 

「同人活動」というと、一般の方々は「二次創作かつ子どもには見せられない作品」を想像するでしょう。

 

もちろんそれも同人作品の一ジャンルですが、海外で活動するのなら(そのための生活費を得るのなら)一次創作が大前提です。

 

というのは「二次創作でお金を得るのはあくまで創作費のカンパ」という名目があるためです。

 

日本国内でも荒稼ぎしている二次創作同人作家はあまりよく思われていないのに、「二次創作で海外に住んでます」などと言おうものなら炎上の可能性すらあります。

 

また、そもそも二次創作は著作権を侵害しており、原作者の御目こぼしにより辛うじて活動できている状況です。

※二次創作を認めている作品は除きます

 

そのため、原作者が「やめて」と言ったらその時点で過去の作品を含めて全て販売を中止しなくてはなりません。

 

DL同人の大きなメリットの一つに「過去作も在庫を気にせずに販売し続けられる」というストック型収入の側面があります。

 

二次創作はそのストックを失うリスクが高いという点も忘れてはなりません。

 

 

一次創作であれば、これらの何の問題もありません。

 

※販売を委託するサイトがなくなったり、違法DLが蔓延してちゃんと買ってくれる人が減るというリスクは残ります

 

※「子どもに見せられないジャンル」の場合、現地で販売したり印刷したものを持って国を移動する際に法に触れる可能性があります(国によって違います)

 

※これらのことは同人作家の基本中の基本の知識ですが、このジャンルが広く知れ渡ったことでこの手の「暗黙の了解」を知らない(知っていても踏み外す)人が増えているようなので最初に伝えることにしています

 

 

海外移住と海外ノマドと外こもり

 

当記事では、海外移住も海外ノマドも外こもりも全てひっくるめて「海外移住」と表現しています。

 

厳密にはそれぞれ違うものですが、いちいち「海外移住や海外ノマドや外こもりをしたい場合...」と毎回書くのは冗長すぎるからです。

 

なお、個人的にはこれら3種であれば海外ノマドを強くオススメします。

 

海外ノマドとは、ビザなしまたは安価な観光ビザで滞在できる期間だけその国に滞在し、期限内に別の国に移動するスタイルを言います。

 

ノマド=遊牧民のように海外を転々とすることから「海外ノマド」と呼ばれているようです。

 

海外移住(のうち、永住権を取得するケース)は費用がとても高くなり、超長期でなければ元が取れない国がほとんどのため、「この国に骨を埋めてもいい」という強い意志がない場合はあまりオススメできません。

 

また、外こもりは海外でお金を稼いだ場合、海外ノマドとみなされることが多いです。

※「外こもりは海外で一切の労働をしてはいけない」という厳格な定義を他者にも求める過激派が存在します

 

 

同人作家の海外移住 最大のメリットは

 

海外移住の最大のメリットはご想像の通り「物価の安さ」です。

 

生活費が安くなるため、特に初心者から中級者の「日本国内で専業同人作家になれない収入」レベルの人にオススメできます。

 

日本ではアルバイトをしながら同人活動をしたり、社会人をしながら同人活動をする人が多いですが、それらの「生活費を得る方法」が同人活動と無関係なのであれば、画力などの同人活動に関する能力の上昇率は低くなります。

※「漫画・ゲーム制作とは一見無関係の仕事・生活が作品に活かされる」という主張自体は否定しませんが「毎日長時間働いてペンを握るのは1日1時間もない」というのであればそれは非効率です

 

一方、海外では生活費は節約を意識せず頻繁に外食をしていても10万円以下という国がたくさんあります。

 

※10万円は衣食住だけでなく保険・税金などその他の経費を含みます

 

節約すれば5万円以下も可能です。

 

毎月1作品出して過去のストックと合わせて月5万円売り上げるというのは本気で取り組むのなら不可能ではありません。

 

※繰り返しますが「簡単に」「片手間で」とは言っていません

 

収入源がイラストを描くことであれば、収入を増やすための努力とイラストを上手く描くための努力が同じ方向になります。

 

アルバイトで生活費を稼ぐために毎日10時間使う生活と、イラストで生活費を稼ぐために毎日10時間使う生活であれば、後者の方が明らかに画力は上がります。

 

 

環境の違いによる刺激

 

国が違えばそこに住む人も建物も違います。

 

これらの日常ではないものは創作活動に大きな刺激になることでしょう。

 

東欧を含むヨーロッパに行けば、「異世界モノ」のような建物に普通に人が暮らしていたりしますし、日本のマンガやアニメの登場人物はヨーロッパやロシアの人たちの外見に近いです。

 

※物価が高いのはヨーロッパの西側、フランスやドイツなどいわゆる西欧と呼ばれる地域です。物価が安いのはポーランドを含めた東側です

 

 

絵が描けると海外でモテる?

 

日本のアニメ・マンガは海外でも(一部の人に)人気です。

 

多くの国でコスプレイベントが開かれていたり、現地の人のためのアニメショップがあったりします。

 

たとえばタイにはアニメイトがありますし、ウクライナでは首都だけでなく地方都市にもアニメショップがあり、年4回以上コスプレイベントが開催されます。

※ウクライナに関しては2019年以前の話であり、2022年の例のアレ以降は状況が変わってしまっています

 

絵が描けるのなら現地のオタクにモテます。

 

 

海外移住のデメリット

 

ここからが本題です。

 

上記のメリットは多くのいんふるえんさぁが語ってくれています。

 

ただ、彼ら彼女らはデメリットをほとんど語りません。

 

ここでは同人作家が特に困るであろうデメリットを紹介していきます。

 

 

日本限定公開モノが手に入らない

 

一番大きなデメリットは「日本で限定公開される作品が手に入らない」ということでしょう。

 

同人作家であればアニメやマンガなども最新作を手に取りたいでしょうし、イベントにも参加したいと思うかもしれません。

 

アニメ・マンガは昔と比べると(有料の)動画サイトで視聴できたり電子書籍で同時発売されることが増えましたが、まだネットで見られないものも多いです。

 

イベントに関しては特に注意が必要です。

 

特に同人作家にとって最も重要なイベントであるコミケは、夏のど真ん中と年末に行われるため、航空券も現地(都内)滞在費用も跳ね上がります。

 

絶対に参加したいイベントが毎月のようにある人は生活費が安くなっても遠征費がクレイジーな額になるので海外移住は諦めましょう。

 

 

デジタルツールの持ち運び

 

最近はデスクトップよりノートPCという人が増えているようですが、それでも同人作家は注意が必要です。

 

ノートPCは代替品が手に入りますが、液タブ・板タブはかなり難しいです。

 

日本のアニメや漫画を好きな外国人は多いですが、それは消費者としてであり「自分で描いてみたい」という人は限られます。

 

秋葉原のような電気街もないので専門性の高いパーツを現地で実物を見て買うのは難しいです。

 

 

私は板タブ派ですが、液タブは重い上に壊れやすいので海外ノマド的な暮らし方を考えているのなら避けるべきかもしれません。

 

ただ、現地で販売していなくても輸入するという手があります。

 

国によっては配送技術が低く破損のリスクが高いですが、「絶対に手に入らない」というわけではありません。

 

 

作業環境

 

同人作家、特にイラスト(漫画を含む)の場合は座っている時間がとても長いですよね。

 

ですのでゲーミングチェアを利用している人もいます。

 

物価の安い国で値段の安い部屋を借りる場合、それ相応の安い椅子しかないことがあります。

 

さらに、安ホテル住まいの場合は机すらないこともあります。

※国によっては1泊1000円前後のホテルもあるため、「掃除を定期的にしてくれる」「長期契約が不要」などの理由でサービスアパートメント感覚で利用する人もいます

 

机があったとしても横幅が1メートルもないような狭いものということもありますし、おしゃれさを重視して高さが30cmしかない低いテーブルが置かれていることもあります。

 

そういった質の悪い机で毎日8時間も10時間も作業すると、健康に大きな問題が発生します。

 

 

年単位でそこに住むのならゲーミングチェアや大きな机を購入してしまうのもアリでしょう。

 

ですが海外ノマド的に数か月単位で移動するのなら、十分な同人活動環境が得られる部屋を探す手間がかかります。

 

 

税金について

 

税金、特に所得税については必ず納めなくてはなりません。

 

※極端に収入が低い場合など例外はあります

 

ただ、海外で同人活動をするケースの明確なルールが存在しないようで、税理士さんによって判断が違ったりします。

 

「活動の主体」がある国(つまり現地)で支払うのか、「販売の主体」がある国(つまり日本)で支払うのかといったことは明確に決まっているわけではないようです。

 

多くの税理士は「日本人として日本で支払っておくのが安心では」としていますが、状況によって大きく変わるそうなので鵜呑みにせず自分の場合はどうなのか確認すべきでしょう。

 

同人作家に限らず、海外ノマドをしている人の中には「払わなくていい」と勘違いしている人がいます。

 

脱税なのでやめましょう。

 

なお、当然ですが海外(滞在国)に税金を納める場合はノービザや観光ビザでは不法就労になる国がほとんどです。

 

いくつかの国では「起業ビザ」などの名称でビザ取得が可能となっています。

 

海外で税金を納める場合、日本の税理士ではなく現地の税理士・弁護士など専門家に相談をしましょう。

 

どちらのケースであっても、(当記事を含めた)ネットの情報だけを鵜呑みにして自分に都合のいい判断をしないでください

 

税金については専門家に相談をしましょう。

 

 

最後に

 

DL同人で生計を立てながら海外移住・海外ノマドとして生きることは可能です。

 

ただ、ネット上に溢れるいんふるえんさぁ様の語るような「何一つ苦しみのない楽園」ではないことに注意してください。

 

海外生活には海外生活特有の問題がありますし、物価の安い国で切り詰めて生きるのであればただの外こもりよりも同人作家のほうが大変です。

 

それでも生活費が安く済むというメリットは大きいですし、「同人活動で生活費を稼ぐ」という状況ならば「働けば働くほど同人活動の技術が上がる」ということでもあります。

 

「働けば働くほど絵が上手くなり収入も増え、生活が楽になる」というのは今の日本ではなかなか作れない環境ではないでしょうか。

 

挑戦する価値はあります。

 

 

ちなみに、私も同人活動をちょっとだけ行っています。

 

モノがモノだけに健全な当ブログで宣伝できませんが、海外のアパートで一人黙々と絵を描くのもそれはそれでいいものです。

 

「同人作家は全員海外移住せよ」だとか「まだ日本で消耗しているの」などと煽る気はありませんが、「こういう方法もあるんだ」と頭の片隅に入れて置いてもらえると嬉しいです。

 

 

 

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