新海誠監督の最高傑作とも言われる
「秒速5センチメートル」は一方では
「鬱アニメ」「観たら立ち直れない」
などの評価もあります。
どういうことなのでしょうか。
私は映画だけでなく新海誠監督自身が
執筆した小説版や派生作品である
別の著者の書いた「one more side」や
漫画版も読んでいます。
どのあたりがうつと言われるのか紹介
しますのでご覧ください。
秒速5センチメートル 超簡単なあらすじ
ざっくり紹介すると、転校を繰り返していた
同級生の輪に入れない男の子と女の子が
出会い、お互いを補完するように生きようと
したらまた離れ離れになってしまい
一方は幸せに、もう一方は心を失ったまま
生きて行くという物語です。
※個人の感想です。感じ方には個人差があります
アカリを想う貴樹が報われない
主人公の遠野貴樹はアカリのことが好きで
ずっと想いを寄せていましたが一方の
アカリは結婚しています。
貴樹はラスト直前で仕事を辞めてニートに
なっており、さらにうつ病らしき症状を
見せています。
さらにラストシーンでは指輪をつけた
アカリと踏切ですれ違い、
「振り向いたら相手も振り向いている」
という確信を持っていたものの電車が
通り過ぎ踏切が上がったら相手はいなく
なっています。
貴樹とアカリの想いの差が切ないです。
実際にはアカリ自身も貴樹のことを
ずっと大切に想っていましたし、貴樹は
この後前を向いて歩けるようになるのですが
映画ではそこまで直接的に描かれて
いないので派生作品を観ていないと
かなりキツいです。
ノスタルジーが過ぎる
小学生時代のシーンでは多くの人が
経験したであろう出会いや別れ、
困難などが描かれています。
ノスタルジーを感じ悲しい気持ちに
なることはうつ感情に近いものがあり
ます。
今が幸福だと胸を張って言える人は
いません。
だからこそノスタルジーを感じるこの
作品は胸をえぐるような悲しみを感じる
のでしょう。
「思っていた大人になれなかった」と
思っている人ほど立ち直るのが難しい
レベルでダメージを負ってしまう
ようです。
恋愛に臆病な人ほどうつになる?
恋愛面について、大人になれば
なるほど打算や妥協を重ねてしまい
恋愛に臆病になっている人が多いため
純粋すぎる幼い恋愛に心を打ちのめ
されてしまいますよね。
この映画はバッドエンド?ハッピーエンド?
映画単独であれば遠野貴樹はバッドエンドを
迎えていると感じる人が多いでしょう。
ですが、小説版を読むと印象が変わります。
仕事を辞め、うつ病のような状況になって
いますがアカリとの踏切でのすれ違いや
コンビニで読んだサイエンスマガジンでの
ロケットエリシュ(高校時代に花苗と
見た打ち上げロケット)を通して貴樹は
自分が成長したのだと実感し、前を向いて
歩けるようになっています。
最終的にフリーランスのプログラマとして
好きな時に休んで好きな時に徹夜する
というある意味で最高に充実した生活を
手にしています。
貴樹自身が望んだ将来を得られては
いないかもしれませんが、十分に
ハッピーな結末を迎えています。
アカリは好きな男性と結婚しているので
当然ハッピーエンドですし、もう一人の
ヒロインである花苗も種子島で生きて
行くことへの気持ちの整理がついて
います。※漫画版
すべての派生作品を読むと3人ともが
前を向いて進めているハッピーエンドに
なっています。
最後に
「秒速5センチメートル」は映画単独では
うつアニメと言われるような内容です。
主人公の貴樹は小学校の頃から想い続けて
いたアカリが別の男性と結婚してしまって
いますし、天職と感じていたSEの
仕事も退職しうつ病のような状態です。
さらには最後に踏切で「振り向いてくれる」
と思って待っていたらいなくなって
います。
小説版や漫画版を読めばハッピーエンドに
なってはいるものの、今が幸せでない人が
観るとノスタルジーに圧し潰されるような
内容です。
このアニメ映画は貴樹の恋愛面とノスタルジー
という二つの側面で観る人のメンタルを
襲ってきます。
お気を付けください。