こんにちは。
猫の下僕です。
我が主はネズミを捕まえるのが得意です。
庭先で半日近く身動きをせず狙っている様は、自然界のハンターらしさを感じます。
ネズミと同じくげっ歯類のビーバーは、動物界で唯一、自分の生活のために周囲の環境を作り変える生物とされています。
ビーバーといえば、ダム作りですね。
カナダのウッド・バッファロー国立公園では、世界最大規模のビーバーダムが発見されました。
ビーバーの生態や、世界最大のビーバーダムを調べてみました。
目次
ビーバー
動物界で最も有名な建築家、ビーバー。
とはいえ、日本ではビーバーは生息しておらず、我々は映像などで見るか、実際に現地へ行くしかありません。
イメージしやすいよう、まとめました。
分類:哺乳網げっ歯類ビーバー科
和名:海狸(かいり、うみだぬき)
体長:80cm~120cm
尾長:25cm~50cm
体重:10kg~30kg
意外に大きいですね。
和名が海狸となっていますが、海生のような誤解を与えるために、現在はほとんど使われていないのだとか。
げっ歯類の特徴である前歯が非常に丈夫で、わずか10分ほどで直径15cmの木を倒せるそうです。
ほとんどを水辺で過ごしますが、皮膚が濡れるのは嫌がります。
茶色い毛の内側にはびっしりと白い毛が生えており、この毛に体から出す油を塗りつけることで、水が染み込むのを防いでいます。
なお、カナダの国獣にはビーバーが指定されています。
カナダを含めた北米は、開拓時代にビーバーの毛皮交易が盛んであり、なくてはならない獣とされています。
ただし、今はビーバーの毛皮はそれほど価値が高くなく、乱獲などは行われなくなったようです。
ビーバーダム
自分の生活のために周囲の環境を作り替える、ヒト以外の唯一の動物
と言われており、ダム作りは、教わらなくても自然にできるようになるとのことです。
木を齧り、泥や枝などとともに川を横断させるように組み上げてダムとします。
ダムの大きさは、平均的には1.8メートル、幅1.5メートルほどだそうです。
また、ダムの中には巣も作ります。
この巣は、生活空間そのものは水面より上にあるものの、出入り口は水面下に形成され、水の中に潜れない天敵から守るための巧妙な作りになっています。
ウッド・バッファロー国立公園
カナダのアルバータ州北東部、ノースウエスト準州の南部をまたがる国立公園です。
カナダで最大の、44,807平方キロメートルという広さを持ちます。
シンリンバイソンという、アメリカバイソンの亜種の群れが存在し、それを保護するために設立された経緯があります。
世界遺産・ピース・アサバスカ・デルタ
ウッド・バッファロー国立公園には、世界最大の内陸三角州ピース・アサバスカ・デルタがあります。
宇宙からも見える、世界最大のビーバーダム
ウッド・バッファロー公園のビーバーダムは、世界最長の850メートル。
人が簡単には入れない、湿地帯の奥深くにあります。
2010年に、カナダ人環境活動家であるJean Thie氏が発見したとのことです。
確認方法は、衛星写真とグーグルアース。
グーグル・アースすごいですね。
ちなみに、グーグルアースでは「Largest beaver Dam in the world」と表示されており、「世界最大のビーバーダム」の名称で表記されています。
特に固有の名前は存在していないようですね。
90年代のNASAによる衛星写真でもその姿が確認できるようで、ビーバーダムの建設は1970年代に始まったと予想されています。
また、このビーバーダムには、広範囲にわたって草木が生い茂っています。
これは植林したものではなく、ダムが作られてから自然に生育したものであり、ダムが最近できたものではないことの証明にもなっています。
近くにもダムが出現
メインのダムの両側に小さなダムが作られており、3つのダムの結合が進んでいるとのこと。
これらが全て結合された場合、長さはなんと1キロメートルを超えることになります。
ビーバーダムのこれまでの世界記録は、アメリカのモンタナ州スリーフォークスの652メートルでした。
単体でもすでにこの記録は越えていますが、さらに成長しているようですね。
ビーバーダムの功罪
ビーバーの作るダムは、川をせき止め、広大な範囲を水没させます。
環境が大きく変わることで、多くの動植物で賑わう反面、森林破壊なども指摘されています。
生態系の変化
ダムによってせき止められることで、川の流れがほとんどなくなると、水鳥などが羽を休めにやってくるようになります。
また、水草なども育ち、それら植物や溜まった水を求めて動物たちも集まります。
根元が水に浸かることで枯れた木は、鳥たちの巣に利用されます。
このように、ビーバーを基点とした、動植物たちの生態系が生まれ、多くの命が育まれます。
森林破壊?
天敵がいなければ、数が増えます。
1940年代に、アルゼンチン政府がフエゴ諸島に、ビーバーの毛皮を輸出するために、50頭を放しました。
そこにはビーバーの天敵がいなかったため、2008年にはなんと10万頭に増加。
フエゴ諸島の固有の木々を齧り倒し、森林破壊となってしまったとのことです。
アルゼンチン政府とチリ政府により、大規模な駆除を予定しているようです。
とはいえ、天敵の存在する場所では、ビーバーダムが環境破壊になることはほとんどなく、逆に洪水を防止していたり、汚染物質の除去にも貢献しているという調査結果があります。
スコットランドの大洪水
2015年に、スコットランドで大規模な洪水が起きました。
約100戸が避難し、広範囲で停電が発生。
車も浸水して使えなくなるなど、大きな被害が発生しました。
この洪水で流されてきた枝などに、ビーバーに齧られた痕があったことから、住民たちは「ビーバーダムが洪水の原因になった」と考えていました。
しかし、専門家の調査によると、ビーバーダムとは無関係に、大雨による川の上流の水量増加が原因であることがわかりました。
この災害に関する調査により、ビーバーダムはむしろ洪水の害を減らしていることが発覚しています。
ダムにより、一度水の流れがせき止められ、ゆっくりと下流に流れるため、ダムのない場所よりも水の流れが緩やかになるために、洪水が発生しにくいということのようです。
さらに、ビーバーの生息する地域と、生息しない地域の農場を検査したところ、ビーバーが生息している地域のほうが、有機物質が7倍、水生植物が20倍多く生息していました。
農薬などの有害物質も、ビーバーが生息している地域のほうが少ないことがわかっており、ビーバーダムは汚染物質除去にも貢献していることがわかっています。
まとめ
カナダの国内最大規模の国立公園にある、世界最大のビーバーダム。
グーグルアースからも確認でき、その規模はさらに拡大する可能性もあるとのこと。
ウッド・バッファロー公園には、ビーバーだけでなく、森林バイソンなどの絶滅の可能性のある希少な動植物も多いようです。
一度は訪れてみたいですね。