NHKドラマの「みかづき」がスタート
しましたね。
原作小説は昭和から平成にかけての
公教育と塾との関係を軸とした、平成末期の
現在でも考えさせられる内容となって
いました。
原作を読んでいたためとても楽しみに
していたのですが、第1話からかなり
飛ばした内容となっています。
原作を知らない人はついていけなくなる
のではないかと心配になってきます。
第1話
第1話では平成17年、吾郎の孫の一郎が
大学で就職活動をしているところから
始まります。
直後に一郎の祖父である吾郎の用務員時代の
話が始まり、合間に今度はフリーターと
なって弁当の配達をしている一郎の姿が
流れます。
事前知識がない人には吾郎の孫が一郎で
あることも伝わらないのではないでしょうか。
なお、第1話は原作小説では1章と
8章の内容が混在しています。
第1話で飛ばされた内容
蕗子の小学校時代の様子がほぼカットされて
います。
蕗子が小学校時代どんな子だったのか。
用務員だった吾郎とどうやって打ち解けて
いったのか。
そして連れ子である蕗子が実の父にように
吾郎に慕っているのは何故なのか。
このあたりは塾を開講するより前の
原作小説第1章で語られています。
吾郎と千明の関係が意味不明
原作では千明は吾郎に会う前から塾を
作ることを夢見ていました。
「用務員室の守り神」と呼ばれていた
吾郎のもとへ蕗子を偵察に送り込み、
教え方に感銘を受け塾講師に勧誘して
います。
一方のドラマでも蕗子を送り込んでは
いますが、ほとんど一瞬で本当に千明が
吾郎の教え方に敬意を持っているのか
わかりません。
さらに原作では塾の共同経営者という
意味で「同志」に近い存在だった
千明と吾郎が、ドラマでは千明の一方的な
恋心に置き換わっています。
吾郎は基本的に「女性から来られたら
拒絶しきれない」という性格なので
強引なキスで結婚に踏み切るのは不思議
ではないのですが、そもそも千明がなぜ
吾郎をそこまで好きになったのかが
描かれていないので意味不明な展開と
なっていますね。
最初の出会いからその後の教育論の
やりとりをもっとゆっくり描けば千明が
吾郎に惹かれた理由もわかりやすかった
のではないかと思います。
原作小説8章を5話に詰めるのは無理があったのでは
原作小説は1冊ですがかなりのボリュームが
あります。
一方、ドラマは全5回となっています。
8章を5話で描くのはかなり厳しい
ですよね。
「みかづき」は吾郎・千明の世代だけで
なく、娘の蕗子・蘭・菜々美の世代、
さらにはその子どもである一郎までの
活躍が描かれています。
吾郎だけを見ても、用務員から塾講師、
そして塾長へと出世した後にその塾長の
座を妻の千明の手によって奪われ、その後は
海外を放浪、その海外では各地のNGO団体の
手伝いをしたり、現地で校長を務めた後に
日本に戻ってからもNGO団体の手伝いを
しています。
さらにその後に再び千葉進塾の塾長へ返り咲き
ラジオ・テレビなどに出演、書籍も最終的に
56冊刊行しています。
吾郎だけでなく千明も波乱万丈な人生を
歩みましたし、蕗子も小学生から公立小学校の
教師になります。
第1話では生まれていない蘭は成長し
千明の塾を手伝った後に独立し個人指導塾を
経営、その塾が前代未聞の不祥事を起こし
教育界から足を洗い、お弁当屋さんを始めます。
※このお弁当屋さんは「らんらん弁当」です。
菜々美はカナダに行ったりグリーンピースの
活動に参加したりします。
単純に列挙しただけでもこの長さです。
映像にしたら5話でおさまるようなものでは
ありませんね。
全部を描くなら相当な早足になります。
初見では何がなにやらわからない内容に
なってしまいそうです。
最後に
NHKドラマ「みかづき」が放送スタート
しました。
現代にも通じる教育の問題に踏み込んだ
内容なので放送をとても楽しみにして
いました。
しかし、一方でたった5話で終わるという
ことに不安を感じてもいました。
第1話でその不安は的中し、いくつかの
「人と人の関係性」が描かれずに駆け足で
物語が進んでいきました。
私は原作小説の子ども時代の蕗子に
思い入れがあるため、蕗子の吾郎との
絆が強まる小学生時代をさらっと流されて
しまったことがとても残念です。
朝ドラのように長期間放送してもいい
くらいの物語だったのでこのまま
薄い内容で5話まで行ってしまうとしたら
がっかりです。