著:藤原和博「必ず食える1%の人になる方法」という書籍を読みました。
キングコング・西野亮廣が紹介したことで話題になったそうです。
切り口はとても面白く、参考になります。
が、1%の人になるための「7条件」がちょっとおかしいです。
目次
ゴールは1つじゃない!
この書籍の最も面白いところは、「目指すゴールが1つではない」としている点です。
昭和の頃は「会社で出世すること」が全てでした。
ですが価値観の多様化により、会社の出世を望まない人も増えました。
私も社会人時代、新人研修の講師をした際に「出世して責任感を持ちたくない」(だから生涯平社員のままでいい)と語る若者をたくさん見てきました。
この書籍では「サラリーマン志向かプロ志向か」「経済的価値を重視するかそれ以外の価値を持つか」で4分割しています。
もちろん、どの領域が優れているという話ではなく、どの領域を目標にするか(どれになりたいか)という話です。
たとえば「サラリーマン志向」かつ「経済以外の価値を重視する」という領域では、クビにならない程度の仕事をしながら外のコミュニティで楽しむということになります。
若者の中にはこのタイプが増えているように感じます。
これを高齢者は「最近の若いモンは...」と嘆きますが、これは価値観が違うだけでいいことでも悪いことでもありません。
ちなみに私は「プロ志向」かつ「経済以外の価値を持つ」領域にいます。
海外を放浪して好きな事で(辛うじて)食べていける状態です。
分類前の条件が怪しい
上述の「ゴールは1つじゃない」という考え方には納得できますし、大いに賛同します。
ただしツッコミどころは多いです。
この書籍では7つの条件をクリアして1/100のレアな人になることを推奨しています。
条件をクリアするごとに1/2のレア度を獲得していき、7個の条件をクリアすると1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2×1/2=1/128となり、これらの条件を満たせば1%(1/100)のレアな人になれるという論調です。
どんな条件でも「やるかやらないかで1/2」というのはちょっと頭が悪い主張ですよね。
「パチンコは当たるか当たらないかだから確率は50%(1/2)」と言っている人と変わりません。
※驚くべきことにこの本の著者は東大卒です
パチンコをしないだけで1/2に?
初っ端から「パチンコをしないことで1/2のレア度」になると語っています。
パチンコをしなければ社会人全体の半分の人に勝てるということです。
違いますよね?
今の時代、そんなにパチンコをしている人はいません。
パチンコが「時間を奪い、その間クリエイティブなことができない」という主張は理解できます。
その間勉強するなりして自分の能力を高めるべきというのはわかります。
ですが「1/2」は大きな間違いです。
残念ながら今の時代のパチンコユーザーは少なく、1000万人程度です。
この書籍は2013年に発行されたものですが、当時すでに日本人のパチンコ離れは深刻な状況にあり、「日本生産性本部によるレジャー白書」によるとユーザー数は970万人、その後も2019年まで1000万人前後を推移しています。
※2020年は統計が出ておらず、新型コロナウイルスの影響で極端な数値になるので除外します
つまりパチンコをしないことで1/10程度の人にしか勝つことができず、1/2のレア度は獲得できません。
獲得できるレア度は9/10です。
その他の基礎条件はある程度妥当
「スマホゲームをしない」という条件についてはゲームユーザーが全人口の60%前後(スマホ保有率が85%、スマホ所持者のゲーム利用率が7割程度)なので1/2に近いレア度を獲得できます。
条件の3つめは「月1冊読書をすること」ですが、2018年の「楽天ブックス」の調査によるとビジネスパーソンの6割が月1冊も読まないとのことなので1/2ではないもののある程度妥当と言えます。
この3つの条件はどの領域を目指す人も達成すべき条件です。
そしてそこから各領域によって必要な条件が変わっていきます。
D領域・研究者タイプの条件がクレイジー
私自身がD領域の人間だからなのかもしれませんが、納得しがたい条件が連発しました。
ちなみに、D領域は「プロ志向」かつ「経済以外の価値を重視する」タイプで、好きな事に没頭することを優先する生き方です。
このD領域で1%のレア度を獲得するための条件の1つに「結婚」が存在します。
しかも「経済的基盤のために結婚を絶対にするべき」だと語っています。
クレイジーですよね。
たしかに「年収200万で生きるのは難しいけど二人で住めば400万で生活できる」という主張はわかります。
でもそれって結婚である必要はありますか?
しかも「実家に寄生すべし」という条件まであります。
たしかに実家にいれば家賃がかからないので好きな事に没頭できるでしょう。
問題は、この書籍では「すべての条件をクリアすることで1%の人になれる」としているため、「結婚」と「実家への寄生」の条件を同時に満たす必要がある点です。
実家に寄生して収入も少なく好きな事に没頭している人を経済的に安定している人が結婚相手に選ぶでしょうか。
結婚してからも「実家に寄生」を満たし続けることができる人はどのくらいいるのでしょうか。
さらに言えば、D領域は「生涯かけて好きでい続けるものがあること」をそもそもの大前提にしています。
それでいて「長い人生で各領域を変化させてもいい」とも語っています。
これに矛盾を感じるのは私だけでしょうか。
私ならこの条件にする
私ならDタイプの4条件は
・物価の安い国で外こもりして生活費を削る
・他人の目を気にせず好きな事に没頭できる
・好きな事を発表する場を持つ
・好きな事で収入を得る
とします。
※各条件が「1/2」ではありませんが、書籍のオリジナル条件も同様なのでよしとします
外こもりなら生活費を削らなくても月10万円あれば生活できます。
もちろん航空券と保険も込みの金額です。
好きな事に没頭していると「いい加減大人になれよ」だとか「地に足を着けて生きろよ」などと言われますし、世間一般の考え方と馴染めなくなります。
それでも好きな事をしていれば幸せと考えられないとD領域は辛いです。
そしてなによりも好きな事で(生活費程度は)稼げないと、いくら経済的な価値を重視しない領域とはいえ生きていけません。
そして、好きでもない仕事で生活費を稼ぐとなると好きな事への時間が削られてしまうので苦痛です。
「外こもり」であれば上述の通りわずか10万円で(切り詰めるなら5万円台で)生活できてしまうので、好きな事で生活費分を稼ぐのもそこまで難しくはありません。
最後に
この書籍を全て賛同することはできませんが、「1万人に1人の人ではなく2つのジャンルで100人に1人の人になる」というテーマや「価値と志向で4つに分類する」という目的設定については面白いです。
1万人に1人となると生まれ持った才能が必要かもしれませんが、100人に1人程度であればなんとかなりそうです。
価値観の違いによって目的が違うことが「出世を望まない若者」の存在を肯定しているのも納得できます。
この書籍で語られている「7条件」はやや著者の偏った思考が反映されているので、目的にそって自分で改めて条件をつけて行動するのがよさそうです。