2021年のR-1グランプリはルールやシステムなどを大幅刷新したことが裏目となり、多くの人から低い評価を受けています。
とあるコメントが入力できる超大型ニュースサイトでは「いい評価を言っている人が全くいない」と書き込んでいる人までいました。
実際、当ブログのようなサイトですら、「今年のR-1グランプリはよかった!」と口にしている記事を見つけるのが困難な状態です。
逆張りして、「よかった!」という記事を書いてみようと思います。
目次
最も評価できる点
今回のR-1グランプリで最も評価できるのは、「これまでのシステムを大幅に変更してみた」という点でしょう。
実はR-1グランプリは今回が19回目で、日本のテレビ放送されているお笑い賞レースの中で最も放送回数が多い長寿番組(?)です。
※M-1グランプリのほうが歴史は古いですが、4年の休止期間があります
その権威ある(?)賞レースのシステムを大幅に変更するのは簡単ではなかったはずです。
ネット上では「お笑いを好きでもないスタッフが適当に作った番組」などと揶揄されていますが、適当に作るんだったら前回大会の焼き直しが最適解です。
同じセット、同じ評価システム、同じ機材を使えばトラブルは格段に減ります。
19年という長い歴史を持つ賞レースで、よりよくしようと変化をさせたことそのものは評価に値します。
ま、その変化が全くかみ合わなかったわけですが。
スタッフはいい加減な気持ちのはずがない
ツイッターなどではスタッフに対する厳しい声が見られます。
特に「楽して番組を作っている」というツイートが多いように感じます。
そんなわけないです。
前述の通り、本気で楽をしたいのならシステムを変更したりしません。
前回と同じ行動をするのが最もリスクがないというのは、テレビマンでなくても子どもの頃から知っている常識です。
少なくとも、大きな変更の決断をしている時点で「R-1グランプリをなんとかしようと考えていた」ということだけは間違いありません。
ただ、実際に制作に携わる現場のスタッフと企画段階までで理想しか語らない上層部との間に温度差があるという可能性は考えられます。
MCは悪くない
少なくともMCは「自分のやれる範囲で」精いっぱいやっていました。
たしかにメインMCは世間でも指摘されている通り、まだ成長過程の芸人だったために大きな舞台の生放送に対応できたとは言い難かったです。
これまでのMCや超大物ベテラン芸人と比べて技術が足りないのは仕方がありません。
これから成長していけばいいんです。
メインMCに関しては、芸人自身が悪いのではなくメインMCにキャスティングした側のミスです。
いきなり番宣で白けたとしても女優のせいじゃない
今回のR-1の失態を語る人の多くが、番組開始早々にMCの女優のドラマの番宣がねじ込まれたことを指摘しています。
一人目のネタよりも先にドラマの番宣がありました。
ただでさえこの手の賞レースは一人目のネタが始まるまでの引き延ばしが嫌がられるのに、「お飾りの女優」の番宣をねじ込まれたら嫌だと感じる人が出てくるのは容易に想像がつきます。
ですが、あの番宣のくだりは女優自身やメインMCがねじ込んだものではありません。
むしろMCたちは(制作側に忖度してギャグ風味にして)「このタイミングで?」と視聴者と同じ疑問を口にしていました。
メインMCの芸人も女優も台本に口を挟める立場ではないので、この件について女優やメインMCの芸人に責任を求めるのは間違っています。
審査員も悪くない
審査員も(それがいいかどうかは別として)「自分らしい評価」をしていましたし、点数には現れない各出場者への想いを持っていたことを放送後に匂わせています。
審査員長の陣内智則に至っては「優勝後に同じネタを再放送するくらいなら総評を言いたかった」とまで口にしています。
M-1もキングオブコントも審査員は異常なプレッシャーの中で点数をつけており、おそらくそれはR-1グランプリも変わりません。
ちなみに、審査員の評価に個人的な感情が上乗せされているのではという疑惑がありますが、決勝では全審査員が慎重に誠実な審査をしようとした跡が見て取れます。
こちらが本編で明かされなかった各審査員の点数です。
https://twitter.com/R1GRANDPRIX/status/1368750898843807747
「気にかけている芸人」の点数が一番低い審査員が複数いることがわかりますね。
芸人の劣化について
R-1に限らず、「今年の出場芸人は面白くなかった」という声は毎年どの賞レースでも聞こえてきます。
理由は2つあります。
1つ目の理由は仕方がない部分がありますが、2つ目の理由は正確な判断が出来ているとは言い難いです。
1つ目の理由は、今年から芸歴10年以内に限定したこと。
面白いベテランピン芸人が出られなくなったため、面白さが減少してしまうのは仕方がありません。
2つ目は、「今年の出場芸人」vs「これまでの全出場芸人」で比べている点です。
「劣化した」と口にしている視聴者の中には、過去の全出場芸人の中で特に面白かったネタと今年のネタを比べている人がいます。
19回も開催された大会のベストのネタと比べれば、今回のネタが劣化しているのは当然です。
なお私が主張したいのは、「今年はこれまで以上に面白かった」ではありません。
「これまでの大会には今年より面白い芸人もいたし、今年より面白くなかった芸人もいた」です。
「今年は劣化した」を否定することは「今年は過去最高だった」とは異なります。
来年から頑張って
正直に言えば、私自身も今回のR-1グランプリはいろいろと問題があったと思います。
ですが、それらのほとんどはアクシデントであり、誰かの悪意(もしくはやる気のなさ)に起因するやっつけ仕事ではないと思うんです。
よかれと思ってやったものの思うような結果が得られなかったのだと思うんです。
悪意があってやったことなら戦うべきでしょう。
やる気がない人だらけならやる気がある人に挿げ替えるよう働きかけるべきでしょう。
でもやる気があったにもかかわらず不運や技術不足でこうなってしまったのだとしたら、一度の失敗で二度と立ち上がれないような攻撃をすべきではありません。
次回以降、今回と同じミスをしないように修正していけばいいのではないでしょうか。
最後に
ということで、2021年のR-1グランプリのよかった点を絞り出しました。
私は大幅刷新という挑戦そのものは悪いことではないと本気で思っています。
一度にいろいろ欲張った結果、アクシデントに対応しきれなくなったのだと感じます。
来年以降、改善を重ねてM-1やKOCと並ぶ賞レースであると胸を張れるように成長していってくれればうれしいです。
個人的には「視聴者人気」だけを気にした芸人消費型のネタ見せ番組より賞レースのほうが好きです。
R-1グランプリも日本中のピン芸人が本気で狙いに行く価値のある賞レースに成長して欲しいですね。